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キョン子「ま、魔法少女ハァハァだたいま参上…はぁ」
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/08(木) 22:17:21.02 ID:3buuxFI/0
このスレは滅びんよ、何度でも甦るさ。それが人々の夢だからだ!

前スレ
http://dat.vip2ch.com/read.php?dat=02024
本当の前スレ(進展無し)
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1254908758
前々スレ
http://dat.vip2ch.com/read.php?dat=02017
前々々スレ
http://dat.vip2ch.com/read.php?dat=02016
前々々々スレ
http://dat.vip2ch.com/read.php?dat=02015
前々々々々スレ
http://dat.vip2ch.com/read.php?dat=02014
前々々々々々スレ
http://dat.vip2ch.com/read.php?dat=02013

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 22:18:10.73 ID:hVTbWl1R0
キモいよ
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 22:50:05.55 ID:3buuxFI/0
保守
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 22:59:55.78 ID:8n29qW1o0
このスレしぶとすぎだろwww
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age]:2009/10/08(木) 23:10:00.60 ID:LDLzsegPO
しぶといのがスペック
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/08(木) 23:15:12.14 ID:KptPK23fO
堕胎魔…?
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:23:04.87 ID:WykDGn9h0
定期的にもなにも書く前に落ちてただろ
ちょっとパー速に立ててくる。異論はないな?
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:26:17.48 ID:3buuxFI/0
立てるはいいがパー速に立っていることをどうやって作者が発見するのか
ここに来てからその旨を伝えればいいと思う
来るかどうかは祈るしかないが
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:31:38.33 ID:4F3/E8LIO
なら異を唱えようか
パー速はやめとけ、廃墟スレが増えるだけだ
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/08(木) 23:37:41.37 ID:hkRmYmng0
パー速いけ
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:42:36.04 ID:WykDGn9h0
ごめんね、立てちゃった
キョン子「ま、魔法少女ハァハァだたいま参上…はぁ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1255012851/
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:44:10.61 ID:ET6a6AUlO
なんかもうやりたい放題だな
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:45:53.39 ID:3buuxFI/0
ちょw
まぁ立ててしまったものは仕方ないから
そのリンクもテンプレにしたらいい
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/08(木) 23:49:53.99 ID:8443pjtSO
懐かしす
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:50:26.57 ID:4F3/E8LIO
独断で立てるんなら疑問符までつけて聞くんじねぇよカス
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/08(木) 23:57:55.71 ID:WykDGn9h0
>>15
ごめんね、なんか立ってることがネタ化してたから...
マジに続き読みたかったんだ
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 00:00:01.88 ID:B0MF27s80
しかし来ないものだな
続きが気になるっていうレベルじゃねーぞ
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 00:11:12.79 ID:JseBORY00
パンドラが長門の肌を傷つけたあたりまでは読んだんだが、
その後スレ立ってたのか
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 00:16:36.86 ID:B0MF27s80
読むのならここにしとけ
http://www.vipss.net/haruhi/1253423352.html

>>1のリンクは読んでる側のレスも残っているが
タワー等が多くて読みにくいから
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 00:27:59.48 ID:8XcQXvdT0
キョン「俺は鶴屋さんが好きだ」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/08(木) 23:49:11.41 ID:WykDGn9h0
ついにパー速行きました

キョン子「ま、魔法少女ハァハァだたいま参上…はぁ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1255012851/

朝倉「あなたと付き合って涼宮ハルヒの出方をみる」 キョン「」
320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/09(金) 00:02:00.91 ID:WykDGn9h0
ついにパー速行きました

キョン子「ま、魔法少女ハァハァだたいま参上…はぁ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1255012851/


ID:WykDGn9h0の悪意がみえみえできもい
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 00:34:22.41 ID:B0MF27s80
悪意というか、健気ジャマイカ
地震で離れ離れになった知人を捜し歩いているようで
作者の目に付く可能性の高い所を回ってくれているんだろ
作者がこのスレ検索してくれたらいい話なんだがw
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 00:44:02.81 ID:b18b2bv60
>>20
悪意って...ごめんね
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 01:18:11.49 ID:B0MF27s80
なんで誰も保守しないんだよw
落ちる寸前じゃねーか
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 01:40:16.68 ID:fxMk8Fg5O
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 01:50:23.00 ID:B0MF27s80
消失やったああああああああああああああああああああ
この日が来るのをどれ程待ち望んだことか…
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 02:07:36.05 ID:0E1Y87d5O
消失がくるとな
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 02:43:24.87 ID:RqnWou+0O
橘はまあ出ないか・・・
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 02:45:02.83 ID:0E1Y87d5O
もう誰か書いてくれよ
書けるやつ一人くらいはいるんだろ
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 03:22:19.41 ID:FmSrPAT+0
よし任せろ
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 03:22:20.71 ID:623OGzkzO
保守
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 03:36:10.50 ID:623OGzkzO
ほす
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 03:47:51.65 ID:FmSrPAT+0
波を打つような大地の暴挙は一向にやむ気配がない。
震度的にみて堅固な校舎が倒壊する恐れはなさそうであるが、
これだけ揺れてりゃ心構えをする暇もなかった一般生徒らは、
床にヘバりつけるだけでも上出来といったところだろう。
そんな校内状況を横目に階段を駆けあがっていく最中、
あたりに人がいないことを悟った俺は携帯電話の着信に応じた。

「森さん、視えてますか?」
『ええ、現場にいるから勿論。となると、そちらからも視えているようね。
 各関係からの情報筋でアタリをつけて警戒網を張ってはいたけれど、
 まさかこんな形で相見えることになるとは思いもしなかったわ。
 件の箱の影響が、『神人』が外空間へ現出しかけているみたい』

しかけている?

「ってことは、まだ完全には現れていないってことでしょうか?」
『そうよ。現在は姿形だけが視えている、いわば現出地点に影写された状態。
 だけど時間が経過するにつれて実体も伴い始めているように見受けられるわ』
「そっち方面って建物や住人なんかが大勢いるんじゃ?」
『幸い、丘陵地に造られた閑静な高級住宅地付近だから駅前に比べればマシなものよ。
 それでも『神人』が閉鎖空間内部と同等の力を持っていると仮定した場合、
 このままいけば被害は甚大。前日と本日の雨も相まって地すべりの危険性すらある』
「把握しました。長門と共に、すぐにそちらへと向かいます」
『出来る限り急いで頂戴。協力者による現出の延引にも限度があるから。
 勿論、地域住民の避難誘導も並行させてはいるけれど、ステルスは忘れないようにね』
「了解」

俺が通話を終えたとき、長門が屋上扉を解錠した。
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:00:22.08 ID:623OGzkzO
ん? 作者キター?
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:03:32.59 ID:FmSrPAT+0
一秒ごとに雨脚が増し続ける濁り空。豪雨。どしゃ降り。
それに構わず突っ走り、屋上の安全柵をも踏み越え、

「開け――パンドラ!」

意識障害を気力で耐え抜くなり、『拒絶』と『疾駆』を行使する。
ストン、と背中に長門も飛び乗ってきた。
同時に物理フィールドでも展開させてくれたのか、
雨は俺たちを避けるように降り注いでいき、
高速飛行している割には風の抵抗を一切受けない。

「長門! あいつをどうにか出来る鬼謀とやらはないか!?」

神速果敢、雨を切って空を駆ける。猶予なんて寸刻すらない。気絶なんて以ての外。
地域住民に被害がでるのもかなり不味いが、騒ぎになるのはもっと不味い。
ハルヒに『神人』が視認されちまった以上、早急に何とかしなければ。

「方法はある。人工的に発生させた限定空間へ、対象を引き込む」
「一昨日にお前がやった空間閉鎖に情報封鎖だっけ。すまんが頼むぞ」
「ちがう。それらは既に試み、効果が芳しくないと判明した。
 大規模な遮蔽スクリーンの展開は困難。同時並行の空間切除も至難。
 現在、対象の現出を遅延させる微小な効力しか発揮できていない」
「……現在? じゃあ、森さんが言っていた協力者ってまさか」
「わたしと同等の任に就くものたち」
「超能力者と宇宙人の相互協力ってわけか。このぶんじゃ、未来人もいそうだな」

バケツをひっくり返したような雨によって見通しは限られ、
遠くは霞み、『神人』の姿は水のカーテンの奥で泳いでいる。
この悪天候のおかげで視界が遮られているのは唯一の幸運だ。
晴れていれば数十キロ先からでもバケモノの姿が視えていたことだろう。
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:13:41.51 ID:FmSrPAT+0
長門の助けを借りた『疾駆』は敵陣へ放たれる嚆矢のごとく、
気色と血色の悪い『神人』までの距離をみるみるうちに縮めていく。
やがて近場まで到達すると、避難誘導を受けている人々のなかに、
敢然と集った森さんらの姿を見つけたので、俺と長門はすぐさま着地した。

「遅くなりました、現状はどうなんでしょうか?」

呼びかけてはみたが、姿が視えていないのだろう。
森さんはこちらを向いたものの焦点が定まっていない。
けれども慌てる様子もなく淡々と続けていく。

「現状は見ての通りよ。『神人』が現出しかけているわ。
 ついでに、空間干渉の際に発生した余剰エネルギーによって地震が発生。
 雨であることも重なって災害警報もでてるし、付近一帯はパニックね。
 もっとも、地震が発生してくれたお陰でこちらとしては誤魔化しが利くけど……」

渦中のバケモノは痩身が黒々としているものの、
50%程度の透明度を誇っており、どろどろとした雨雲が身体の向こうに透けている。
俺は面白くもない『神人』の観察はそこでやめにし、次に辺りを見回した。
傘も差さずに必死に逃げようとする人たちがいる一方で、
恐れる様子もなく『神人』を注視している人や、区域民の誘導に勤しむ人、
何かをやっているのか『神人』にむけて両手を掲げている人たちなど多種多用だ。
その服装もスーツを着込んだ社会人チックなのがいれば、大学生じみた者もおり、
なかには老人、小学生、そして我が北高の制服に身を包んだ高校生までいる。
やけに席がガラガラだなとは思っていたが、まさか身近にも潜伏してやがったとはね。
まあいい、そういうのは後回しだ。この場において彼等はみな、俺たちの味方なのだから。
そんなことよりも。

「これからの指示をください」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:19:12.45 ID:FmSrPAT+0
森さんが苦虫を噛み潰すかのように顔を歪める。

「難しいところね。
 閉鎖空間内部でなくては超能力者は能力を発揮できない。
 長門さん側の協力を得て限定空間への阻却も行ってはいるけれど、
 『神人』の力があまりに大きすぎて抑え込めそうにないのが現状よ。
 最悪……このまま現空間で闘ってもらうしか無いのかもしれないわ」

でもリスクが高すぎる、と森さんが零す。
毎度ながら、幼くみえる容姿からは想像し難いほどに的確な状況分析。
本物の閉鎖空間を生みだす『神人』がパンドラボックスの力を得た以上、
人工の閉鎖空間を創りだす長門らの能力では太刀打ちできないのだろう。
かつてハルヒが一度目の世界改変を行おうとした際も、
長門や古泉たちはヒントを残すために進入するので精一杯だったのだから。
或いは、ヤツがパンドラと同じく不合理反発特性を有したのかもしれないが。

だったらどうすりゃいい?
この人だかりのなかで俺がマトモに闘えるのか?
仮に闘えたとしても、代償として辺り一帯を吹き飛ばし兼ねない。
昨日、古泉によって連れ込まれた閉鎖空間のなかでの一件を、
現実の世界でやっちまえば大災害どころの騒ぎではない。壊滅だ。

「何か方法は――!」

はたと感づき、パンドラを睨む。
『本物の閉鎖空間を生み出す能力』を持つ、『神人』。
そして、他者から奪い取った情報をもとに自己進化を齎す杖、パンドラ。

そういうことか。考えてもみれば、俺は『神人』を斬り付けていたじゃないか。
だとしたら今の俺は、『神人』と対等の立場へ立てていることになる。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:23:03.45 ID:623OGzkzO
期待age
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:33:41.54 ID:FmSrPAT+0
「方法が見つかったのかもしれません」

言うなりパンドラを雨天に掲げ、なかほどを両手で握る。
上手くいくかどうかは解らないが、やってみるほか道はねえな。
それと同じくして『神人』も実体を得たのか、接地する地響きが伝わってきた。
重さなど持っていなかったはずのあいつが、どうしてか盛大な足音を立ててやがる。

「時間がない。長門、俺に加勢してくれ」
「理解した」

長門がパンドラに触れるなり、眼を閉じて意識を集中させる。
頭の中に閉鎖空間内部のイメージを強く念じ、
可能な限り綿密に描きだし、『神人』を送り返すという意志を強固にしていく。
雑念が混じれば初めから唱え直し、集中が途切れれば描き直す。
空を灰色に塗り、家は闇色に飾り、唯一の明かりは街灯のみという光景。
明確に明白に自身へと問いかけ、それが当たり前なのだと錯覚させ、
自己暗示に次いでのセルフコントロールを高次元にまで昇華させていく。
途中、『神人』が腕を振るったのか悲鳴とともに破砕音が轟いたが、
俺は気を逸らさず空間を創りだすことだけに努めつづけた。

やがて幾度目かのこと。
喧噪が消え、風の音が止み、雨の音が流れ、
世界には自分の意識だけしか存在しないのだと確信できたその一瞬を衝き――。

「現実からは消えてしまえ」

『封鎖』の意をこめて、杖へ縋るように捻り込んだ。
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:42:53.55 ID:FmSrPAT+0
パンドラの杖頭から放たれた白色レーザー光線のようなものが、
厚雲で覆われた空に伸び切るまでは、瞬き一つも要しなかった。
まず雨雲が吹っ飛んだ。綺麗なまでに。跡形もなく。
鬱屈としていた空には真夏の日差しにも匹敵する太陽が生まれ、
この身を冷たく濡らそうとしていた雨は、匂いすら残さずにかき消える。
文明を思わせていた白壁の高級建造物は一瞬にして朽ちてしまい、
廃墟のようなそれらには植物のツタが満遍なく絡みついている。
足元には花々、頭上には青天、遥か遠くは大地が切り取られたかのような虚空。

一変した景色は、まるで古い映画にでもでてくる浮島の楽園だった。
俺たちを中心にした円形で、空へと浮かぶ空中庭園。優しげな風までもが流れている。
そして、どうしてかこの風景は琴線に触れる。理由もわからず涙が溢れそうになってしまう。

「異相空間への転移を確認。特異限定空間の生成が認められた。
 間もなく仮称『神人』が現空間から送達されてくるものと思われる」

杖から手を離した長門がいう。
しかし、これを創りあげたらしい俺は釈然としない。

「こんなイメージを持った覚えはないんだけど」
「当該空間はあなたではなく、『彼女』のイメージに強く依存している」
「……なるほど。それにしてもハルヒのとは違って、やけに開放的だな」
「それが『パンドラの少女』の願望なんでしょう?
 うん、なかなか見晴らしがいいわね。ピクニックでも催したい気分だわ」

背後からの声に振り返ると、そこには森さんがいた。
太陽らしきものへ眩しそうに手を掲げている。しまった、巻きこんじまったのか?

「いえいえ。超能力者を甘くみてもらっては困りますね。
 限定空間へ進入するのが我々の本分。自ら望んで踏み入ってきたんですよ」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:54:24.60 ID:FmSrPAT+0
からりと笑ってみせた森さんが長門を捉える。

「この空間はどのくらい持ちそうですか?」

長門はゆるりと周囲を見渡してから答えた。

「臨時措置につき一つ一つのプログラムが甘い。第一に、安定性が著しく欠如している。
 切除対象の能力も加味した場合、突破されるのは時間の問題。長くは持たない」
「では空間の維持に人員を割いていただけますか? 避難誘導はこちらとあちらで担います。
 負担を掛けてしまいますが、現空間からの『神人』の送還補助も速やかにお願いします」

森さんの申し出に首肯するなり長門は黙りこむ。仲間との意思疎通でもはじめたのだろう。
そういや、空間の安定性が欠如していると言われてみれば確かに、
浮島の崖より向こう側の空が、ところどころ黒く、ぽっかりと口を空けている。
黒糖パンのレーズンよろしく虫食いとなっているそこでは、
テレビの砂嵐状態を連想させる虹色ノイズがチラついているようだ。
俺はパンドラの握りを確かめつつ、森さんへと進言させてもらう。

「折角のところ悪いんですが、巻き込んでしまう恐れがあります。
 極力少人数で闘うのがベストだと思うので、森さんはこのまま――」
「あらあら安く見られたものね」

両手を空へと拡げる、どこかで目にした仕草。

「長らく続いてきた『神人』との闘争は、わたしたちが存在してきた意義でもあるんです。
 それを終わらせようというときに超能力者がその場に居なくては、とんだ御笑い種よ」

森さんがぱちりと指を鳴らすと、古泉同様の紅玉が指先に浮かんだ。

「空間特性としては天然の閉鎖空間と大差なさそうね。贋作というよりは名作なのかも」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 04:59:49.04 ID:FmSrPAT+0
「やっぱり森さんも超能力者だったんですね」
「そうでなくては長門さまとの同居とはいえ、あなた様とは暮らせませんから」

にっこりと使用人モードでの微笑み。
まったく、メイドからソルジャーまで器用な人だな。
考えてもみれば俺がピックを振るった際にも、この人は動揺すらしなかったのだ。
あれから推察する限り、かなりの場数を踏んでおられるのだろう。
森さんは紅玉を吹き消すと、両手を払ってから口を開いた。

「単純に超能力者としての使命、というわけでもないんです。
 『神人』とは本来、超能力者たちが束になって挑むような強敵。
 あなたも体験なされたのでしょうが、マトモに攻撃を受ければ致命傷ものです。
 万が一にもあなたに何かが起こってしまってからでは、取り返しがつきませんので」
「そのことでひとつ確認があるんですが……。
 どうして古泉はあのとき、単身で『神人』とのテストを執り行ったんですか?」
「逆にお訊ねしますが、古泉の真意が本当にお分かりにならないのですか?」

少しばかり怒りを孕んだ顔つき。
いえ、わかりますと俺は首を振った。森さんの反応で確証を得たからだ。
古泉は前日、長門から『俺』や『少女』、パンドラの危険性を聞いていたのだろう。
だから無用な被害を抑えるために、敢えて単身で実戦テストを行った。
俺が長門のとき同様、「周りへの被害だけは抑えてくれ」と頼むと知っていたから。
つくづく、あいつの糸引きには頭が上がらない。

「同期が完了した。対象が当該座標へと送達される。注意して」

長門の一声で場に緊張が走り、俺たちは一斉に構える。
俺はパンドラを両手で。森さんは握り締めた片掌で。長門は棒立ちで。
遠くに着地した『神人』が大地を揺るがしたのは、それから数秒後のことだった。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 05:19:11.87 ID:FmSrPAT+0
丘陵地の高地に俺たち、低地に『神人』という位置取り。非常に見通しがいい。
障害物ともなっている元住宅の廃墟街は、段々畑のように連なっている。
それはさながら、塹壕や鉄条網といったところか。隠れるには最適だろう。
即座に森さんが片目を閉じ、開いた指での目測を行う。

「目標までは1キロと200メートルといったところね。
 わたしが正面を担うから、長門さんは右舷、キョンくんは左舷から仕掛けて。
 ただし、『神人』が『石箱』によってどの程度の力を得ているかは不明よ。
 間違っても相手の攻撃半径には立ち入らず、分析から入るように。油断は禁じなさい」

指示を受けるなり、素早く散開。
怒り狂うように暴れる『神人』めがけ、正面から突っ込んでいく森さん。
それを流し見しつつの俺は、建物を飛び越えながら横手へと回り込んでいく。
こちらと対称となる位置には長門が向かっているようで、その背中はもう、米粒のように小さい。

『聞こえる?』

声が聴こえた。というより響いた。頭のなかで長門の声がだ。
テレパシーのようなもの、なのだろう。今更その程度じゃ驚かない。

「ああ、聞こえる。森さんにも聞こえているのか?」
『そのようね。長門さんがいてくれて助けられたというものよ。
 多人数行動で連携が取れなければ、協力どころか自滅もありえるから。
 さて、先陣はわたしが切るわ。『神人』の動向も妙なので、まずは小手調べ。
 それに、キョンくんには極力トドメだけ刺してもらうのがベストだと思うし、
 長門さんは超能力者でない以上、『神人』とは満足に闘えないはずだから――!』

言い終わるよりも早く、森さんが練成したらしい運動会の大玉転がし級な『紅玉』が、
霞の先で地団太を踏んでいた『神人』の頭部へと邁進していた。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 05:25:26.62 ID:FmSrPAT+0
大爆発でも引き起こしそうな見た目とは裏腹に、それの弾速は非常に速く、
疾風迅雷かつ正確無比なスナイピングショットはヤツの頭部を見事に捉えた。
『神人』の頭部から汗を散らすように、禍々しい黒砂の粒子が飛散する。
が、派手に爆砕したわりにはフラつきすらしない。

『思ったより効果が薄いようね』

森さんも不振な様子だ。
黒の痩身で覆われたバケモノは、
被弾に構わず地面を掘り返すような仕草をみせている。

「なにをやっているんだ、あいつは?」
『限定空間の切開と、生成要因への情報攻撃』

長門の淡々とした声が響く。

「つまりなんだ、ヤツはここから脱出することを最優先に動いてるってことか?」
『そのように推測される』
『となると、急がなければならないようね』

日の当たる閉鎖空間は、お気に召さないってわけかい。
パンドラを持つ手に力を込め、みんなへ告げる。

「こちらからも仕掛けてみます」

進路を変更し、バケモノの右半身側へと急速に距離を詰めつつ、杖を捻った。
カシャリ、という駆動音と共に刹那的衝動が湧き上がってくるが、
唇を噛み、臥薪嘗胆の心得だと自戒させることで正気を保たせる。
ピックだ。射程限界ギリギリから、閃光と閃熱による衝撃で、ヤツを焼き払う。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 05:36:37.97 ID:FmSrPAT+0
安全面のことも考慮し、最適な距離をとりつつ助走をつけていく。
自我のためにも、あまり時間をかけるわけにはいかないんでな。

「いくぜカイブツ」

前回の反省を活かし、熱で付近一帯を焼かないようにと飛び上がり――、

「蒸し羊羹にでもなりやがれ!」

慣性と体重を乗せた一回転とともに、ピックを唸らせる。
光と熱と爆轟が空気を震わせ、猛禽類の威嚇に近い風鳴りが一瞬にして、俺の聴覚を奪う。
続けざま、衝撃の刃が着弾するかどうかを見届けずに態勢を整え、
身を捻って第二波を放ち、さらに崩れかけた体勢から片腕でもう一波のプレゼント。

連続三回転。休んでいる暇はない。一気に畳みかけなくては。

無茶な連撃だったせいか、俺の身体は近場の屋根に叩きつけられ、
一人でにコケたときのような無様な格好を晒すハメとなったが、
こちらの攻撃は『神人』に命中してくれたようで、ヤツが地を揺るがす音はピタリと止まった。
噴き上がった砂塵はバケモノの巨体を覆い隠し、周囲の廃墟には砂塵の雪が深々と積もっていく。

『相変わらず凄い衝撃。あんなのを扱って、キョンくんの身体は平気なの?』

森さんの声。

「問題ありません。まだいけます」
『そう。でも無茶はしないでね』

はい、と答えて立ち上がり、一定の周期で呼吸をするよう努める。
この程度で片付けられる相手じゃないことは、重々判っているからだ。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 05:46:19.34 ID:FmSrPAT+0
それでも腕の一本くらいは断裁できたのかもしれない、という期待は裏切られた。
砂煙が風に流されると『神人』の姿が露わになったが、
ヤツは蚊にでも刺されたか、と言わんばかりの仁王立ち状態。
地面を打ち鳴らすのは止められたようであるが、まるで手応えが無い。

「ちくしょう。マジでバケモノかよ」

俺が舌打ちしたとき、突如バケモノの首がフクロウのように捩れる。
ダルマ落としの頭だけを回したときのような、不自然で無機質なるそれ。
そしてヤツの双眼と思しき虚ろな窪みは、紛れもなくこの俺を捉えていた。
黒色でのっぺりとしていた体躯も、
その内面では対流でも起きているかのようにドロドロと蠢いている。

危険だと本能的に察知した。何か仕掛けてくるつもりなのだと。
それを気取ったときには、俺の周囲が急速に暗がりへと落ち込みはじめていた。
長門からの指示がくだされたのはその直後だ。

『エントロピーの増大を観測。可能な限り、対象から離れて』

既に飛び上がっていた俺は、『疾駆』を行使して風を切ろうとする。
が、背中に走った痛みに行動が阻害され、
痛みの正体を探るべく青々とした空を見上げ――。

「なっ……!」

絶句するほかなかった。
周囲が暗がりに落ちていた理由が判明したからだ。
まるで日食の如く、太陽光を塞ぎ切るような黒色の鋭利な槍。
夥しい数のそれが、俺の頭上をもれなく飾っていた。
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 05:58:07.59 ID:FmSrPAT+0
ぴくり、と無数の槍のうちの一本が揺れ、振動が全体へと伝わっていく。
ツララのように鋭利な刃物は、今にも落ちてきそうだ。
俺は辛うじての判断により、持ち直したパンドラを捻って『拒絶』する。
同時、槍の雨に視野全域を覆われ、鋭い刃が五月雨のごとく降り注いできた。

トタンの壁を無数のトンカチで叩いた時のような金属的摩擦音。
杖を盾にした防護障壁によって軌道を逸らせてはいるが、
両腕に伝わってくる圧力は段階的に増していく。持ち堪えられそうにない。
着々と障壁の有効範囲が狭まりはじめ、槍が横髪を掠めだし、
それを察していた間にも、左脚を貫かれる強烈な痛みが生じた。駄目だ、持たない。

「よく耐えた」

耳元での一声は、死を目前に控えた幻聴かと思えた。
だが、槍を払う赤光と、ぐいと首元を掴まれる感覚で身体が軽くなった後には、
空に太陽が輝いており、俺は背中から地面へと叩きつけられていた。

「長門!?」

いつの間にか、座り込んでいるその人を見上げている。

「空間跳躍」

説明終了とばかりに立ちあがった長門。俺も杖を支えに、よろよろと立ちあがる。
どうやら風景からするに、最初に俺たちがいたらしい場所へと戻ってきたようだ。
『神人』の位置も遠くへと離れ、丘陵の低地に陣取ったあいつを見下ろす形。

「間一髪か……サンキュ。人生二度目とはいえ串刺しなんて真っ平ゴメンだ」

建物の陰へ身を潜めても、当然、臨戦態勢は解けない。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 06:05:41.49 ID:FmSrPAT+0
警戒しつつも『拒絶』を解除し、自己修復に出力を充てる。
長門も制服の裾を切り刻まれているが、目立った外傷は負っていないようだ。
俺は一息をつきつつ、森さんへ問う。

「あいつらって、元来あんなに凶暴なんですか?」
『いえ、有得ないことだわ。『神人』は空間の破壊活動こそが本分。
 巻き添えで超能力者が負傷することはあっても、
 ああまで明確に、執拗に、敵意を示したなんてことは前例にないもの。
 そもそも飛び道具を扱えるなんて事実さえ、初めて知ったというのに』

話を伺いつつも森さんの姿を探しているのだが、どこにも見つからない。
先ほどの攻撃を避けるため、狙撃されないよう建物群へと潜んでいるのだろう。
やがて、黙考していた長門が分析結果を伝えていく。

「空間干渉能力。動力源は涼宮ハルヒと『彼女』両名の対エネルギー。
 攻撃は、仮称『パンドラボックス』の物質転移特性を利用したものとみられる」
『現空間へ現出するケースからの応用である、と?』
「そう。仮称『神人』の絶対危険区域は周囲250メートル前後と推定。
 しかし射程距離自体に際限は無く、試行回数によっては習熟も考えられる。
 現時点においては、距離を空ければ補足時間と捕捉精度を鈍らせられるものと判断」
『相手は刻々と進化するというわけですか。アレを持っている以上当然なのかもしれませんが。
 けれども下手に近づけないのは厄介ね。何か突破口は浮かびませんか?』

考え込んだ長門を横目に、俺は物陰から『神人』の様子を窺う。
ヤツは消えた獲物を探しているのか腕を振り回しつつ騒ぎ立て、
自棄酒を呷った暴力亭主のような所業で近場の建物を吹っ飛ばしている。

奇怪なほどに攻撃的。
ヤツの頭部は歯止めが狂ったパトランプのように回転している。
次に眼が合った瞬間、俺はミンチにされているのかもしれない。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 06:17:57.34 ID:FmSrPAT+0
杖の効力でだいぶ、傷も癒えてきたようだ。状況は振り出し。
されど左脚と背中の治療が完了しても、『神人』の癇癪による地響きはやまず。
長門は黙考。森さんも応答なし。俺も同じく黙りこむ。
考えなければ。何かしらの有効な手立てを。
安易に近づけないとなれば、大別しての方法は二つしかない。

ひとつ、遠距離から何とかするという方法。
ひとつ、近距離まで何とかして近づくという方法。

ピックの閃熱や森さんの紅玉が通用しないとなれば、
必然的に近距離まで接近し、切断を狙うほか策がなくなってしまうが、
再度、『黒槍』の餌食になれば次こそは無事でいられる保障がない。
先ほどは森さんの援護射撃と、長門の空間跳躍によって助けられたものの、
あれは狙って何度もできるような代物じゃないのだろう。
もし容易かったのであれば、俺が負傷することはなかったはずだからだ。

「…………」

元々、ピックは『神人』に対して効果が薄い。
先日のテストでもある程度までは明らかだったがこの度、実証までされちまった。
加えて、『神人』と闘う場合のセオリーは切断。
距離が開くほどエネルギーが扇状に拡散してしまうピックじゃ、切断力が足りない。
となれば接近してのハルバードか、超能力者による糸切りが有効だと思うが……。
こんな時、古泉ならどうやって闘う?
昔、俺が目にした超能力者たちならば――待てよ。

俺も超能力者じゃねえか。

一人だけの力で算段を立てていたという過ちを恥じる。
古泉、お前の力を借りさせてもらうぜ。
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 06:25:46.28 ID:FmSrPAT+0
『紅玉』のイメージを描いて杖をキツく握ると、
パンドラも理解を示してくれたのか、水晶刃が赤に染まりだす。
思い返せば、俺は古泉のときに『紅玉』で反撃していたはずなのだ。
そして防護障壁は長門のマジックを応用したもので、
パンドラの特性は他者からの能力奪取と自己進化。
ならば『紅玉』を応用して、対神人用の武器を生みだせるのかもしれない。

「パンドラ、古泉の能力を活用しろ」

言葉にしたほうがイメージが楽なので呼びかける。
杖の扱いに長けた『あいつ』なら必要ないのかもしれないが、俺には無理だ。
それにここで交代なんかしちまうと長門や森さんらの身が危ない。
まだまだ自我は保てそうだし、できれば永眠しておいて欲しいくらいでもある。
と、長門が妙な眼つきでパンドラを眺めているのに気づく。

「どうしたんだ?」
「デバイスのエネルギー捻出機構において改正が為されている。
 極めて高い速度での効率化、および高度な最適化が図られている」
「悪いけど俺には難しいことなんて解りそうもねえや」
「端的には、進化。生物のそれと同じ」

長門には何かがわかったらしいが、俺にはサッパリだ。
しかし効果が表れていることが判ればそれだけで充分。
よく応えてくれたと労う代わりに、パンドラを握り締めてやる。
爪部分が赤く染まっていたパンドラは、次第に赤光が拡がっていき、
ついには深海の発光生物のように、杖全体が仄かな赤色に包まれた。
試し切りを待ち兼ねるように震える杖は、俺に自信を与えてくれる。

頼むぜ、相棒。
今はお前の薄っぺらそうな望みに頼るしかなさそうだからな。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 06:36:55.51 ID:FmSrPAT+0
肚を決めるなり、長門への質問。

「どうにかしてヤツの懐まで接近できないか?」
「リスクが高い。近接するのは自殺行為に等しい」
「だったら、ピックが有効な200メートルまでならどうだ」
「わたしによる連続的な空間跳躍は不可能ではないが、
 次点の座標捕捉には一定の予備動作と算出が必要不可欠。
 跳躍する質量が増せば増すほど、比例して算出時間も増していく。
 現在の仮称『神人』は認識から攻撃動作に移るまでに一秒と要しない。
 よって、わたしが算出に要する僅かのラグですら命取りとなりかねない」

ピックを放ち、黒槍が降り注いできた際のことを脳裏に描きだす。
200メートル以上は距離があったのに、気づけば槍の包囲を受けていた。
あの距離ですら一瞬で仕掛けてくるのだから、
これは死地に飛び込むような作戦なのだろう。だが他に道はない。

「接近と離脱が無理なら、離脱だけでいい。可能か?」

長門は暫し静止したのち、

「それならば一定の安全性は保障できる」

頷いてくれた。
よし、作戦は決まりだ。

「長門、お前は森さんと合流してくれ」

そして俺は二人へ向けて、手早く方針を伝えていく。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 06:42:20.99 ID:xEBhxW6+0
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 06:46:42.93 ID:FmSrPAT+0
一通りの説明を終えると、森さんから返答がきた。

『それだとキョンくんのほうのリスクが高いわね。
 わたしとしてはまずまずの良案だとは思うけれど、
 問題点は攻撃タイミングがシビアってところかしら。
 どこかに一つでも綻びが生じれば――例えば、
 あなたの攻撃が通じなかったり、わたし側の初手が遅れれば、
 荒れ狂う『神人』からの手痛い反撃は確実でしょう。
 それどころかあなたが倒れてしまえば『あの神人』は倒せない。
 術者が倒れ、限定空間が破られてしまえば敗北も必至。万事休す』

それより、と森さんは息をつき、

『あなたとわたしの役目を換えたほうがよいのではないかしら?』
「だけど森さんに『神人』を倒せますか?」
『トドメはあなたに任せるとして、動きを封じる程度までならば可能でしょうね』
「あいつの四肢を切断したところで、その後はどうするんですか?
 超能力者が切断を狙う場合、目標へゼロ距離まで近接する必要があることは既知です。
 即ち、森さんがヤツの腕を落とす場合、距離をとれる俺よりも飛躍度的に危険性が増します。
 というよりはむしろ、反撃は確実。その際、防護障壁を持たなければ串刺しは避けられない」
『でもキョンくんに何かがあったら、我々側はチェックどころかチェックメイト同然。
 将棋にしろチェスにしろ、キングは最後まで守るべきものなの。そうでしょう?』
「生憎、俺はパーフェクトが好みなので、手駒のひとつですら取られるのが腹立たしいんです。
 先日もそうでしたが、今まで暇つぶし程度にやってきた古泉とのゲームだってそうでしたからね。
 今回もそうです、徹底的に三人が同列な安全策を採らせて貰います。
 俺がキングかクイーンかは知りませんが、そうお考えであるのなら、異存は問わせません」

捲し立てるように言って、森さんを押し黙らせる。
捨て身の策なんて断じて採らせるものか。
そういうのはもう、いらないんだ。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 07:21:31.02 ID:FmSrPAT+0
「森さんのほうを頼むからな」

強引な提案。
こくりと頷いた長門は森さんと二言程度の会話をし、
それにより座標捕捉とやらを終えたのか、『呪文』の途中で目前から掻き消えた。

『……本当にそれでいくのね?』
「はい」
『わかった。やるからには最善を尽くすから』
「お願いします」

森さんの同意も得た。あとは各々が役目を全うするだけだ。
まずは、作戦場所へ移動しなくてはな。それも極力急いでだ。
身体が頭痛を訴えだしてきたので、俺としても猶予がなさそうだから。
感覚が覚束なくなり始めた腕に鞭を振るい、杖を捻って不可視の『拒絶』を行使し、
建物から建物へと走り、それを繰り返して少しづつ『神人』のもとへと距離を詰めていく。
ヤツに不可視が通じるのかは不明であるが、愚直に走るよりはマシだろう。
とはいえ、ピックにしろハルバードにしろ杖を捻る攻撃形態との併用はできないし、
最終的には姿を現さなきゃならないので、まさに気休めにしかならないが。

「森さん、そちらの状況はどうですか?」
『長門さんの助けも借りて、すでに目標地点に到達しているわ。
 こちらの準備は整っているから、そちらにとって最良のタイミングで合図して』

下り坂を駆けおりている最中、ルート確認と併せて辺りを見回した。
錆びついた信号機や、草木が絡みついているブロック塀。草花の絨毯。
豪快にひび割れたコンクリート道路は、急激に盛った街路樹が呑み込んでおり、
市街地のなかだというのに木漏れ日を浴びるという、幻想的で頽廃的な光景。
そんななかを、足音を立てないようにとひた走る高校生。ふと、なんとなく。場違いにも。
森さんの言葉通り、皆とピクニックで来れるんなら楽しめそうだったのにと思った。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 07:56:28.26 ID:c6Wz7M+EO
なんか言えよカス
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 08:15:10.78 ID:EN93B7DdO
作者へ

パー速見付けた?
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 08:49:04.19 ID:z3KE2e3LO
寝たのかな?
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 09:49:15.85 ID:623OGzkzO
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 10:08:03.69 ID:623OGzkzO
保守
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 10:47:50.17 ID:623OGzkzO
捕手
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 11:05:40.79 ID:623OGzkzO
誰か後の保守頼む
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 12:05:32.77 ID:EN93B7DdO
保守

次誰か頼む
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 12:19:24.34 ID:623OGzkzO
ありがとう

保守
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 12:26:56.23 ID:MX23imv4O
作者よ…たのむからパー速でやってくれ
落ちてばっかりで読みにくい
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 12:42:24.22 ID:623OGzkzO
保守
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 12:51:31.37 ID:TYh341m00
何回も立てるくらいなら落ちないパー速池よ・・・・・・バカだなぁ
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 12:53:00.16 ID:623OGzkzO
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 13:03:08.15 ID:623OGzkzO
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 13:14:28.17 ID:623OGzkzO
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 13:26:25.83 ID:623OGzkzO
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 13:37:03.96 ID:623OGzkzO
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 13:50:37.00 ID:623OGzkzO
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 14:01:10.29 ID:623OGzkzO
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 14:05:30.22 ID:xEBhxW6+0
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 14:47:23.37 ID:YKAFqe+R0
作者きたのかい
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 15:12:26.54 ID:nWz0J4U70
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 15:54:11.61 ID:EN93B7DdO
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 16:27:09.84 ID:623OGzkzO
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 16:54:55.09 ID:xEBhxW6+0
次いつ来るんだろ・・・
79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 17:23:28.51 ID:nWz0J4U70
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 17:25:25.11 ID:B0MF27s80
+   +
  ∧_∧  +
  (0゚・∀・) ワクワクテカテカ
  (0゚∪ ∪ +
  と__)__)   +
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 17:42:43.35 ID:B0MF27s80
         旦旦旦旦旦旦旦旦
http://www.uproda.net/down/uproda001012.zip.html
.   ∧__,,∧   旦旦旦旦旦旦旦旦
   ( ´・ω・)   旦旦旦旦旦旦旦旦   お茶とdat置いておきますね
.   /ヽ○==○旦旦旦旦旦旦旦旦
  /  ||_ | 旦旦旦旦旦旦旦旦
  し' ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_)) ̄(_))
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 18:03:33.03 ID:fxMk8Fg5O
保守
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 18:06:30.78 ID:ZDccsNN10
キョン子の文字に吸い寄せられてきてみればただの保守スレか
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 18:37:49.23 ID:fTGYCG300
>>81
いただきます
そして保守
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 18:42:48.37 ID:HDfeJtiG0
参考画像ってないん?
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 18:50:56.38 ID:xEBhxW6+0
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org239097.jpg
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 18:51:03.93 ID:ZwAdCW4WO
あったよ
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 19:06:18.31 ID:HDfeJtiG0
>>86
ありがとう

これだけなのかな
いつも結構絵がうpされてるとおもったんだが
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 19:32:23.99 ID:ZwAdCW4WO
カラーのもあった
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 19:46:46.72 ID:HDfeJtiG0
>>89
いただけないでしょうか
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 20:17:06.12 ID:ZwAdCW4WO
携帯だからちっさくなってしまってるけどいい?
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 20:32:36.89 ID:HDfeJtiG0
>>91
まぁ…仕方ないか…
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/09(金) 20:32:56.06 ID:HDfeJtiG0
↑途中送信すまん
おねがいします
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 20:51:16.99 ID:0E1Y87d5O
まさかの進展だと
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/09(金) 21:04:22.53 ID:ZwAdCW4WO
http://imepita.jp/20091009/757510

多分魔法使いの
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